精密などんぶり勘定とは
経験と勘で行っていた見積もりを、実績データとの照合で継続的に補正し、人や日によるばらつきを小さくする手法です。補正には機械学習などを使います。
どんぶり勘定なのは、細かいところは丸めて、結果が変わるところだけを見るからです。
精密なのは、人間と違って、過去との答え合わせを自動で続けるからです。人は昨日の外れを忘れたり、たまたま当たった日だけを覚えていたりします。ソフトウェアは毎日の実績を全部同じ重さで覚えていて、ずれた分だけ次の日の見込みを直します。
同じブロックでも、入れ方で入る量は倍ちがう
まずは全部同じ大きさのブロックで比べます。ブロックの大きさは切り替えられます。①は組み立てるようにギチギチに積んだ場合、②はバラーっと流し込んだ場合です。オリコンは同じ50Lです。
① ギチギチに積む
向きを揃えて、隙間なく積み上げる
–%
② バラーっと流し込む
上から流し込んで、自然に落ち着いたところ
–%
同じブロック、同じ箱でも、入れ方だけで入る量が倍近く変わります。倉庫で毎日起きているのは、②のほうです。
②の箱は「とんとんする」を押すと、揺すって隙間を詰め、空いた分にブロックを足します。何回か揺すると6割近くまで上がりますが、そこで止まります。ギチギチに組み立てた①には、どうやっても届きません。「流し直す」を押すたびに、流し込み方は毎回ランダムに変わります。最初の数字はばらつきますが、とんとんした後は、どの回も同じあたりに集まります。
※このシミュレーションでは、ブロックは必ずまっすぐ置かれ、斜めにはなりません。実際に流し込むと、ブロックは斜めに引っかかったり、もたれかかったりして、その下にもっと大きな隙間ができます。なので、流し込んだだけの充填率は、実際にはここよりもう少し低くなるはずです。とんとんすると斜めのブロックは倒れて落ち着くので、揺すった後の数字はあまり変わりません。斜めまで再現するにはブロック同士がぶつかる物理計算が必要で、ブラウザでは重くなりすぎるため、ここでは省いています。
丁寧に詰めても、計算の数には収まらない
今度は流し込まずに、丁寧に詰めます。荷物は大きさも形もバラバラな商品で、①と②でまったく同じ、量はオリコン2個ちょっと分です。①はコンピュータが全部並べ替えて詰めた理想、②は人が向きを揃えて寄せながら詰めた場合です。
① コンピュータが理想どおりに詰める
全部の荷物を先に並べて、大きい順に一番低い場所へ(現実にはできない)
–個
② 人がいつもどおりに詰める
ピッキングで来た順に。向きを揃えて、壁や隣の箱に寄せる。入らなければ次のオリコンを開け、前の箱の隙間には小物を入れる
–個
何回やっても、計算より少なくはならない
箱、ボトルや缶のような円筒、平たい商品を混ぜた荷物を100回ずつ作り、人が向きを揃えて丁寧に詰めた場合のオリコン数を、商品マスタの容積から計算した数と比べました。
疑わしいと思ったら、計算が当たりやすくなるように条件を自分で選んでください。条件を変えると、100回からやり直します。
計算のオリコン数 = 商品の容積の合計 ÷(オリコン1個の容積 × 1個に詰まると見込む割合)を切り上げ
詰め方を理想にしても、商品をきれいな箱だけにしても、1個に詰まると見込む割合を80〜100%にしている限り、計算より少なく済むことはまずありません。ズレは必ず同じ向きに出ます。だから溢れは起きても、トラックが余る事件は起きません。
見込む割合を60〜70%まで下げると、ようやく計算が当たり始めます。つまり、計算を当てたければ、見込む割合を現実の詰まり具合に合わせるしかありません。そして、その数字は実績からしか分かりません。
頑張って詰めても、充填率はほとんど上がらない
人は箱の向きを揃えたり、壁や隣の箱に寄せたりと、最低限の工夫はしています。そのうえで、さらに「置き場所を何か所見比べてから置くか」を増やすと、充填率がどう変わるかを測りました。見比べる場所を倍にすれば、作業時間もほぼ倍になります。
向きを揃えて寄せるだけで、充填率は6割前後まで行きます。ところが、そこから先は見比べる場所を128倍にしても、ほとんど変わりません。来た順に詰める限り、全部並べ替えた理想を超えることはできません。現場が5〜6割に落ち着くのは、手を抜いているからではなく、作業時間と詰まり具合がちょうど釣り合うところだからです。
同じ大きさの球を容器に流し込んだときの詰まり具合は、粉や粒の研究でよく調べられていて、そっと落ち着かせると55%前後、手で詰めても60%前後、揺すって固めても64%前後です。形も大きさもバラバラな商品なら、これより上がることはまずありません。
色ごとに分けると、箱はもっと増える
倉庫では、売り場や区分ごとにオリコンを分けます。少ししかない色でも、オリコンは1つ開けることになります。ここでは毎回、中身の合計をオリコン10個分にそろえて、それを6色にばらばらの割合で分けています。
商品マスタのサイズがズレていても、オリコンの数はほぼ変わらない
色ごとに8種類ずつ、合計48種類のブロック商品を作ります。商品マスタには、本当のサイズから縦・横・高さがそれぞれランダムにズレた値が入っているとします(円筒は直径と高さ)。ズレは商品ごとに決まっていて、100日のあいだは同じです。マスタに間違った値が入りっぱなしの状態です。どの商品がどれだけずれるかは、ボタンを押すたびにランダムに作り直されます。毎日の出荷を100日分作り、本当のサイズで詰めた場合と、マスタのサイズで計算した場合のオリコン数を比べます。
カゴ車でも、効くのは売り場と重さ。サイズのズレはほぼ効かない
ケースのままカゴ車に積む商品は、同じ商品が何ケースも並びます。40種類のケースを6つの売り場に分け、毎日15〜30種類を1〜12ケースずつ出荷する日を100日分作りました。カゴ車は内寸 約78×58×156cm、1台500kgまでです。カゴ車は売り場ごとに分け、人が向きを揃えて積みます。商品マスタのケースサイズ(縦・横・高さそれぞれ)と重さが、ランダムにズレていたらどうなるかを比べます。ズレは商品ごとに決まっていて、100日のあいだは同じです。どの商品がどれだけずれるかは、ボタンを押すたびにランダムに作り直されます。
ザックリ数学で言うと
ここまでの話は、全部この1本の式で説明できます。
ポイントは「1個に入る量」です。オリコンは50Lですが、人が詰めると隙間ができて、実際に入るのは6割の30Lくらいです。
1. 計算は、いつも少なめに出る
中身が100Lあるとします。「50L全部に入る」と考えると、100 ÷ 50 = 2個です。でも本当に入るのは30Lなので、100 ÷ 30 = 3.3…で、余りが出るから4個になります。入る量を多めに見積もると、答えは必ず少なめに出ます。逆に、計算より少なく済むことはありません。
2. 商品マスタが少しずれていても、ほとんど変わらない
クラス50人のテストの合計点を考えてください。何人かの点を少し多めに、何人かを少し少なめに書き間違えても、合計はほとんど変わりません。多めと少なめが打ち消し合うからです。商品も同じで、1個1個のサイズが1割くらいずれていても、50個足せば、合計のずれは1%くらいになります。
3. それでも数が変わる日は、境目の日だけ
30Lずつ入るオリコンなら、中身が91Lから120Lまでは、どれも4個です。中身が少しずれて100Lが102Lになっても、4個のままです。数が変わるのは、ちょうど120Lのあたり、つまり境目ぎりぎりの日だけです。発注がバラバラなら、そういう日はめったにありません。
ただし、オリコンや車にちょうど収まるように、物流量から逆算して発注量を決めている現場(物流量逆算発注)では話が変わります。中身の量が境目のすぐ手前に集まるので、ちょっとのずれで4個と5個がひっくり返る日が、ぐっと増えます。箱をきっちり使おうと工夫するほど、台数は当てにくくなるわけです。そういう現場ほど、台数を1つに言い切らず、「4個か5個、5個になる確率4割」のように確率で出すことが大事になります。
4. 答え合わせを続けるほど、当たるようになる
「1個に30L」は計算では決められません。でも、毎日の実績から「昨日は中身◯Lでオリコン◯個だった」と答え合わせをすれば、逆算できます。1日分だと、たまたまの分が混じります。何日分も集めると、たまたまの分がならされて、本当の値に近づいていきます。だから、続けるほど当たる確率が上がります。
まとめると、「1個に入る量は、実績で答え合わせして決める」「細かいずれは、足し算と余りの切り上げにまかせる」。この2つだけで、台数が当たる確率は上がっていきます。
逆に使えば、オリコンの数から発注量を決められる
ここまでは「この発注だと、オリコンは何個になるか」を予測する話でした。同じ仕組みを逆向きに使うと、「オリコン◯個に収めるには、どこまで発注できるか」が出せます。
オリコンの数 → 発注量(逆算発注)
たとえば、1個に30L入るオリコンで考えます。
- 中身が118Lなら:オリコンは4個。あと2Lまでなら、4個のまま足せます。
- 中身が122Lなら:オリコンは5個。でも5個目には2Lしか入っていません。2L分減らせば4個で済みます。逆に、5個目を使うなら、あと28L足しても5個のままです。
発注の画面で「あと何個まで入ります」「これを足すと1個増えます」と出せれば、少しだけはみ出す発注をなくせます。「4t車1台に入る分だけ売ってくれ」という注文にも、溢れない量で答えられます。
ここでも大事なのは確率です。境目ぎりぎりまで攻めると、少しのずれで溢れます。「4個に収まる確率9割の量まで」のように、どこまで攻めるかを選べるようにしておくと、運賃を使い切りつつ、2台目を出す事故を減らせます。
だから、実績で台数が当たる確率を上げる
詰まり具合は、頑張っても上が頭打ちで、下はどこまでも下がります。商品マスタのサイズを正確にしても、この差は埋まりません。それでも予測が大きく外れないのは、細かいブレが箱の段階ごとに丸められるからです。
毎日同じ人が同じように詰めて、台数を決めるのは大物だけ。それを毎日、実績で答え合わせする。これが精密などんぶり勘定です。

